★★山岡瑞雪作品集★★
希求の果て』 文芸社より2000年発行
『破滅の足音』理想書店より電子本2005年9月発行
『雲のかなたに』理想書店より電子本2006年2月発行
『ティンパニは鳴り止まない』 マチともの語り掲載

2007年04月22日

友よ、安らかに!

彼女は聞き上手だった。いや、聞き出し上手。

「あれはどうなった?」「今でもあれはやってるの?」「あれはどうするの?」

私はだんだん答えるのが嫌になってくる。

「分かれたご主人は、今どうしてるの?」
「知らないよ。生きてるんだか、死んでるんだかも知らない」

ぶっきらぼうに私は答える。そう、それは事実。一切音信不通なのだもの。知るわけがない。

「あの人は? あの別れた人」

彼女は私の身近な人の中で、私の書いたものを読んでいる数少ない一人。でも、よく分かっていない。二度と会うことは無いであろう人のことをなぜ聞いてくる?

「知らないよ」

私の不機嫌に気付いたらしい彼女は、ひっそりと言う。
「私、恋愛したことないのよね。どういうものなのかなあと思って……」

彼女は結局、一度も恋愛をせず、一度も結婚をしないまま、この世を去った。

春になり、あちこちで花の見ごろが報じられる。

桜は終わってしまったが、今はツツジ、フジだより。この季節になると彼女と花見に行ったことを思い出す。彼女は細い身に似合わず、健脚でどこまでも歩き続けた。

「ちょっと休まない?」と言い出すのは、いつも私のほう。

その彼女が去年、癌で亡くなった。自分の病状を淡々と話すのを聞いたのが最後だった。

子宮を手術で取り除き、放射線や抗がん剤の治療をして、元気になったとばかり思っていた。それが、肝臓に転移したのである。

それを聞いてからというもの、私は恐ろしくて電話ができなくなった。もう、彼女が亡くなって半年以上になる。

花が好きだった彼女。
今、あなたの周りには花がいっぱいですか? 

きっと、この世の修行が済んでしまって逝ってしまったのですね。

遺された私はまだまだ修行が残っているのでしょう。生きるのもきついなと思ってしまう私だけれど、命ある限りは生き続けなければならない。

友よ、安らかに眠りたまえ。
posted by 瑞雪 at 15:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。